
めまいやふらつき、大量の発汗などの症状を放置しないで!早期発見で、 熱中症 の重症化リスクを軽減へ
熱中症による死亡件数は年々上昇傾向にあります。急激な温暖化や湿度の高さ、子どもたちの外遊び減少による発汗性能の低下、高齢化などにより、さらに熱中症の危険性が高まってきています。
監修・取材協力:けやきクリニック
伊藤 隼 院長

熱中症 -基礎知識
熱中症とは、高温多湿な場所での運動や仕事などによって、体内の水分や塩分などのバランスが崩れて体温調整機能が働かなくなり、体内に熱がこもって体温が上昇する症状をいいます。
交通事故による死亡件数は2,663人(令和6年)で、今後、熱中症による死亡件数が交通事故による死亡件数を上回ることが予想されるほど、熱中症になる人が増加しています。
熱中症は外だけでなく、室温や湿度が高いと室内でも発症します。場合によっては死に至る重篤なケースもあります。
熱中症 -出やすい症状
熱中症は、軽症のものから重症のものまで3つの重症度に分類されます。
Ⅰ度(軽症)はめまいやふらつき、筋肉痛や大量の発汗などの症状がみられ、Ⅱ度(中等度)は頭痛や嘔吐、倦怠感、虚脱感などの症状が挙げられます。Ⅲ度(重症)になると、意識障害や痙攣、手足の運動障害などが現れるようになります。
Ⅰ度の場合は冷所で安静にして体表を冷却、経口的に水分とナトリウムを補給することで、現場で対応可能です。
Ⅱ度の場合は医療機関での診察が必要、Ⅲ度の場合は入院加療が必要になってきます。

熱中症 -WBGT値(暑さ指数)について
熱中症の重篤化を防止するために労働安全衛生法が改正され、令和7年6月より施工されました。熱中症を予防するために用いられる指標「WBGT値(暑さ指数)」を把握することも大切です。
WBGT値は、気温や湿度、輻射熱(電磁波による暑さ)などを総合的に評価できる指数をいい、WBGT測定器を使用すると一目瞭然で数値を確認できます。WBGT値が高ければ高いほど熱中症になるリスクが上昇していくため、日常生活や運動内容などを再確認しながら、熱中症にならないように気をつけましょう。
WBGT値(暑さ指数)を測定して熱中症対策を
【屋外での算出式】WBGT(℃)=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾玉温度
【屋内での算出式】WBGT(℃)=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
※WBGT値測定値を使用すると、数値をすぐ確認できます
「厳重警戒」は激しい運動は避け、休憩と水分摂取をしっかりと行うこと、「危険」は原則運動を中止しましょう。

熱中症 -原因
急激な温暖化や湿度が高いといわれている日本は、熱中症の危険性がかなり高い国です。昔と比べて子どもたちの外遊びも減少し、子どもたちの発汗機能が低下しているのが現状です。
また、高齢者は喉の渇きを感じにくく水分補給も怠りがちになり、発汗性能が低下していきます。自分自身の体の異常に気が付きにくい子どもや高齢者は、他の人と比べて熱中症になりやすいといわれているので、ご家族や周りの人々の協力も重要です。
熱中症 -今すぐはじめる予防と対策
効果的な水分補給について
熱中症対策としてもっとも効果的なドリンクは、「糖質」と「塩分(ナトリウム)」を含んだものです。糖質の一種であるブドウ糖は、塩分と一緒に摂取することで腸管での吸収が速やかになり、水分も一緒に吸収されるため、効率的に水分補給ができます。
また、ブドウ糖と果糖を含むドリンクは、水よりも早く、そして高いレベルまで血漿量(血液中の血球以外の液体成分の量)が回復します。

お茶や水だけでは 熱中症 対策としては不十分?効果的な水分補給を心がけましょう
実は、熱中症対策において、お茶や水だけを飲むのは効果がありません。腸管での水分吸収を速める効果がある、「糖質」と「塩分(ナトリウム)」を含んだ水分補給が効率的です。
塩分(ナトリウム)だけではなく、糖質と一緒に摂取することで、より効果が期待できます。


子どもの 熱中症 を防ぐポイント
顔が赤くてひどく汗をかいている場合は、深部体温が上昇している可能性があります。涼しい環境下で十分な休息を与えましょう。
また、喉の渇きがなくても、暑いときは運動時にはこまめな水分補給を日常化し、熱放散を促進する適切な服装を選んであげましょう。暑さのピークは12時~15時頃といわれているので、この時間帯は運動を避けたほうが良さそうです。
高齢者の 熱中症 を防ぐポイント
室内温度を28℃以下を目安に設定し、エアコンに対してのマイナスイメージを無くすことが大切です。汗をかいて体温調節を行うためにも、身体の水分量の維持はかかせません。こまめに水分補給を行いましょう。
糖尿病薬や高血圧の薬には脱水を助長させてしまうものがあるので、医師との密なやりとりも重要になってきます。

初夏の今こそ 熱中症 予防 熱中症 は「気温」「湿度」「輻射熱」などの環境要因、「からだ」や「行動」による要因によって引き起こされます 高温環境下に長時間いる時など、体温が急激に上昇して起きる熱中症。熱中症は日常生活の中で発生し、死亡リスクもあります。真夏の暑さに備えて、今から健康づくり、体力づくりをしていきましょう。
●マガジンタイプで読みたい方はこちら
