年齢を重ねると誰にでも起こりうる病状
嚥下障害

嚥下障害 イメージ

栄養低下と筋力低下への悪循環を断ち切るためにサルコペニアによる 嚥下障害 は予防・是正しましょう
飲みにくい、食べにくい、食べたらむせる、食後に痰が出やすいなどの症状は嚥下障害の可能性があります。上手に付き合うために、嚥下障害についてよく知っておきましょう

監修・取材協力:各務原リハビリテーション病院
脳神経内科 和座 雅浩 副院長

Contents

嚥下障害 -基礎知識

人は進化の過程で複雑な言語を獲得したことで空気と食べ物の共通の道が長くなり、誤嚥しやすい喉の構造をしています。

① 喉頭蓋(こうとうがい)
飲み込む時に気道を塞ぎ、食べ物や飲み物が気道に入らないようにする蓋。
② 気管(きかん)
空気が通り、肺へと通じる部分。
③ 食道(しょくどう)
食べ物や飲み物が通り、胃へ通じる道。入り口は左右2箇所ある。

命の危険が伴う嚥下障害

「嚥下」とは食べ物や飲み物を飲み込むことを言います。「ごっくん」する運動は30以上の筋肉が使われ、「素早く」「残らず」「誤らず(誤嚥しない)」に物を飲み込みますが、このごっくんする機能が低下した状態を嚥下障害と言います。嚥下障害の主な原因は脳卒中(約55%)、パーキンソン病などの神経難病(約11%)※1のほか、近年はサルコペニアなど加齢が原因になる嚥下障害に注目が集まっています。

嚥下がスムーズにできないと、窒息、誤嚥性肺炎、低栄養を引き起こす危険があります。飲み込むときに違和感があれば嚥下障害に気がつくのですが、認知機能が低下している人や喉の感覚が低下している人などは、誤嚥をしても咳が出ない不顕性誤嚥を来していることがあり、その場合は気がつかずに過ごしてしまい、肺炎を起こして初めて分かることもしばしばあります。

嚥下障害が起きているかどうかの判断は「嚥下造影検査」や「嚥下内視鏡検査」で詳しく分かるので、気になる方や疑いのある家族がいる場合は一度、検査を受けると良いでしょう。

※1 山脇ら、著書「疾患別に診る嚥下障害」(2012年)

サルコペニアによる嚥下障害

サルコペニアとは

筋肉量が減少して、筋力低下や身体機能の低下が起こることです。高齢者に多く、介護状態にある要因の一つです。筋力が衰えることで嚥下障害が起き、うまく食べることができないため低栄養になり、さらに筋肉量が低下します。

サルコペニアは予防・是正できます

筋肉を作るために、タンパク質不足にならないよう注意してください。特に高齢者は筋合成率が低下するため、積極的にタンパク質を摂りましょう。夏の食事はうどんやそうめんだけ、というような偏った食事は避け、タンパク質も摂れるようなバランスの良い食事を心がけましょう。合わせて、筋肉づくりには、運動を行うことも大切になります。

腎臓や肝臓に疾患がある方は主治医と相談をして、上手にタンパク質を摂取しましょう。

嚥下障害が引き起こす病気・病状

窒息

嚥下がうまくいかず、食べ物が喉に詰まってしまう状態です。交通事故よりも死亡数が多い不慮の事故です。


誤嚥性肺炎

気管に食べ物が入ることで口腔内の細菌が肺に入り、肺炎を起こす病気です。誤嚥が肺炎に直結するわけではありませんが、肺炎は高齢になるほど増加しています。


低栄養

うまく食べることができないため、低栄養になり、さらに筋肉量が低下する悪循環に陥ることがあります。低栄養は免疫力も低下するため、肺炎を引き起こす要因にもなります。

嚥下障害 -治療・訓練方法

嚥下障害の診断・治療法はこの10〜15年ほどで目覚ましく進歩していますが、そのタイプや原因などにより、完治が難しいことも多くあります。その場合は、訓練や食事の工夫などをしながら、嚥下障害とうまく付き合っていくことが大切になります。医師、看護師、管理栄養士、セラピスト、社会福祉士の専門職が一体となった多職種連携チームから適切なアドバイスを受けることにより、生活の質を維持・高めることが期待できます。

「おでこ体操」で訓練

嚥下訓練の一つです。額に手を当てて抵抗を加え、おへそを覗き込むように強く下を向きます。6〜7秒ほど抵抗を加え続けます。また、1から5まで数を唱えながら、それに合わせて下を向くように力を入れます。

おでこ体操

食事の姿勢に工夫を「顎を引いて食べる」

一般的には、顎を引いて(下を向いて)食べると、喉に力が入りやすくなり、食べやすくなります。顎を上げて食べると、喉と気管が一直線になり、誤嚥の危険が増します。普段の食事、また食事介助をされる時は顎が上がらないように気をつけましょう。

「とろみのある食事」は全ての人に当てはまりません

嚥下のスピードが遅い方にとろみのある食事は良いのですが、素早く飲み込めるのに、飲み込む力が低下して残留してしまう方には、むしろ逆効果となってしまうので注意してください。

嚥下障害 -今すぐはじめる予防と対策

毎日の生活で気をつけること

●口の中を綺麗に
もし、誤嚥した場合、口の中に最近がたくさんあると肺炎を起こしやすくなります。嚥下障害のある方は特に、就寝前にしっかりと歯磨きをして口の中を聞い例にしておくことが必須です。

●タンパク質を摂って運動をして筋肉をつけておく
加齢による筋力の低下は手足だけでなく、喉の筋肉にも起きます。低栄養、筋力低下を防ぐために、しっかりタンパク質をとって、運動をしましょう。

嚥下障害 -自己チェック

周囲の方も気になったら嚥下障害を疑ってください。

□ 水を飲むとむせる
□ 飲み込んだ後にひっかかる感じがある
□ 食後に痰が増える
□ 食べ物が口の中に残りやすい
□ 微熱が続く
□ 食事量が減少した
□ 食事時間が長くなった
□ 体重が減少し、痩せ細ってきた

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