どこにある?働きは?病気になる?知っていればいざという時も慌てない
脾臓の病気

免疫機能の働きがある 脾臓 。診断と治療は、専門医への相談をおすすめします。
乳幼児期は血球の生産をし、成人になると免疫機能にも関わってくる臓器。他臓器の病気が原因で腫れてしまう場合や健康診断で偶然、嚢胞や腫瘍が見つかることもあります。

監修・取材協力:日本外科学会 専門医・指導医、日本消化器外科学会 専門医・指導医、日本肝胆膵外科学会 高度技能指導医・評議員、日本内視鏡外科学会 技術認定医 など
愛知医科大学病院 消化器外科
深見 保之 先生

Contents

脾臓の病気 -基礎知識

血液や免疫に関わる臓器

脾臓は左上腹部にある10cm×6cm×3cm程度の大きさの臓器で、重さはおよそ80~120g程度です。

主に乳幼児期では、血球(赤血球・白血球・血小板)の生産をします。成人になってからは古くなった赤血球を処理したり、体内に侵入した異物を捉えて処理したり、細菌に対する抗体を作るなどの免疫機能や、血小板を貯蔵しておく働きをしています。さらに、大量出血時や骨髄機能が低下した時などは、血球の生産を行うと言われています。

普段、あまり意識をしない臓器ですが、物を食べた直後に走るなどの運動をすると痛みを感じることがあります。食べた直後は血液が胃や腸に集まりますが、運動することによって筋肉にも多くの血液が必要になります。本来であれば消化のために胃や腸に多くの血液が使われるところですが、運動している筋肉のために血液が動員されてしまい、胃や腸の血液の流れが足りなくなります。そうした時、脾臓に蓄えておいた血液を送り出そうとして急に収縮し、これが痛みとなって現れると考えられています。

脾機能が亢進し、汎血球減少となった場合や脾臓腫瘍、食道・胃静脈瘤、胃や膵臓の手術の時などに脾臓を摘出した場合や脾機能が低下している場合は抗体を作る機能が低下するため、感染症に注意しなければいけません。

ワクチン接種などの感染症予防に留意し、発熱や腹痛などの症状が出た場合はすぐに病院を受診することが大切です。

脾臓の手術について

どんな時に手術が必要になる?

  • 血液疾患の一部や門脈圧亢進症などで脾機能が高まり、血球が減少した時に血球のコントロールをする場合。
  • 脾臓腫瘍の場合
  • 食道・胃静脈瘤に対して、胃上部血行遮断と脾臓摘出が行われる場合。
  • 進行した胃癌に対する手術で、胃と同時に脾臓摘出が必要な場合。
  • 膵臓の病気で膵臓と同時に脾臓摘出が必要な場合。

手術を行う必要があるかどうかは、主治医や専門医とよく相談の上に決めることが大切です。

どんな手術をするの?

脾臓の摘出が必要と診断された場合、実際に手術を行う外科チームがよく議論した上で、患者さんに手術の方法を提案します。手術前には専門の麻酔科医も全身状態をチェックします。

以前は、おなかを大きく切開する開腹手術による脾臓摘出が主流でしたが、最近は傷が小さく体への負担が少ないとされる腹腔鏡手術による脾臓摘出が行われています。

腹腔鏡手術とは、内視鏡というカメラを使って行う手術のことです。おなかに2~4カ所程度の小さな穴(5~15mm程度)を開け 、その穴から腹腔鏡と呼ばれる内視鏡をおなかの中に入れ、おなかの中をテレビモニターで観察しながら手術を行います。愛知医科大学病院においても多くの手術で腹腔鏡手術が行われています。

脾臓の病気 -考えられる主な種類と特徴

脾臓が腫れる
脾腫

脾臓が腫れる原因は感染症・血液疾患・代謝異常・肝硬変・門脈圧亢進症など様々な病気が挙げられます。そのため、脾腫が見つかった場合は何が原因になっているのか、精密検査が必要になります。

原因によっては、脾臓の機能自体が通常より高まっている(亢進している)場合があります。脾臓本来の働きである血球を処理する機能が亢進して、赤血球・白血球・血小板が減少します(これを汎血球減少といいます)。


経過の様子をみる
脾臓の嚢胞

健康診断などで脾臓に嚢胞(のうほう)が偶然発見されることがありますが、良性の病変のため、増大傾向がなければ経過観察を行います。


良性や悪性もある
脾臓の腫瘍

脾臓に腫瘍ができる場合もあります。海綿状血管腫やリンパ管腫などの良性腫瘍や、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍です。脾臓にいわゆる「癌(がん)」が原発巣として発生することはありませんが、どこかに発生した癌が脾臓に転移することはあります。

脾臓はそのほかの消化器と関わりながら治療、手術が行われます

愛知医科大学病院 消化器外科では、「肝胆膵」「上部消化管」「下部消化管」「小児外科」の4グループ体制で、最適な治療方針を検討しています。
愛知医科大学 消化器外科 https://aichi-med-surg.jp

愛知医科大学 消化器外科

脾臓の病気 -自己チェック

□ 貧血や出血が起こりやすい。
□ 満腹感を得やすい。
□ 腹部や背中に痛みを感じる。
□ 食道や胃など、消化器に病気がある。

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