身体的症状が似ている「夏バテ」との違いは、「気分の優れなさ」がみられるかどうか。
不眠や食欲不振などの身体症状を伴い、気分が落ち込んだり些細なことでも不安になってしまい、落ち着かない状態になる「 夏季うつ 」。
監修・取材協力:西岐阜ほんだクリニック
内科認定医 精神科専門医 本田 浩一先生
夏季うつ -基礎知識
外界の気候や気温、湿気などがストレスとなって生じる
20代の女性に多くみられる夏季うつは、季節性感情障害(SAD)のひとつであり、夏にうつ状態となってしまう症状のことをいいます。一般のうつでは、人間関係や仕事量などがストレスとなり発症することが多い一方、夏季うつなどの季節性感情障害は外界の気候や気温、湿度などがストレスとなって生じます。
夏季うつ -出やすい症状
夏季うつでよくみられる症状には、「寝つきが悪くなった」「何事も楽しめなくなってしまった」「倦怠感・疲労感が取れない」などがあります。夏バテと夏季うつは症状が似ているため、気が付かない場合もあります。夏バテの特徴は、高温多湿な気候に自律神経の調整が追い付かず、倦怠感や食欲不振、不眠などの症状が現れますが、夏季うつは夏バテと同じような身体の不調に加えて精神の不調が出て、夏の時期に限定して現れます。気分の優れなさがみられるかどうかが大きな違いです。秋から冬にかけて症状が出る冬季うつも頻度の高い疾患で、人口の1~3%の人が発症するとも言われています。
夏季うつ -セルフチェックの方法
「夏季うつかも?」と思われた方へ、夏季うつのセルフチェック項目をご紹介します。以下の症状が、3つ以上当てはまる場合は夏季うつに該当する可能性があります。
□毎年夏になると、不調を来しやすい
□食欲がない
□寝付けない、途中で何度も目が覚める
□疲労感が取れない
□気分の落ち込みやイライラ、不安感がある
□何事も楽しめなくなってしまった
□外出やルーチンワークが億劫になった
□肩こり、胃もたれ、便秘、下痢などの消化不良、頭痛、耳鳴などがある
夏季うつ -治療方法
夏季うつの治療方法では、症状によって薬物療法が用いられることがあります。抑うつ気分や意欲低下、楽しみや喜びの消失など、うつの症状が強くみられる場合は、抗うつ薬を処方したり自律神経の乱れを調整する漢方薬を併用することもあります。暑い夏に外気温と室内気温の差が出過ぎないように調整したり、たんぱく質やビタミン類の摂取を心がけましょう。
夏季うつ -今すぐはじめる予防方法と対策
夏季うつの予防には、自律神経を整えるために適度な運動が効果的です。日光を過剰に浴びると疲れが生じるため、日の当たり過ぎには注意しましょう。特に、暑い夏場は早朝や夕方にウォーキングや軽いジョギングを行うと良いでしょう。食に関しては肉や魚、卵、乳製品、大豆類などでたんぱく質をしっかり摂ることが大切で、特にビタミンB1を多く含むウナギや豚肉などの摂取もおすすめです。水分摂取量は一日1.5~2Lが目安です。逆に、炭水化物の摂り過ぎは血糖値の乱高下により気分の不安定さを招くため、夏場についつい食べてしまうアイスクリームや冷たいジュース類の摂り過ぎは控えましょう。また、良質な睡眠も夏季うつの予防には効果的で、環境音楽を流したりお香やアロマを焚くなどして「自分が寝やすい」と思う睡眠環境を作ることも大切です。就寝前のスマホは厳禁です。