50歳を過ぎたらワクチン接種で発症を防ごう
帯状疱疹の予防

3人に1人がかかる身近な皮膚病「 帯状疱疹 」に予防効果が高い新しいワクチンが登場!
免疫力が低下した時に発症しやすい帯状疱疹は、働き盛りの50歳頃から急増する病気です。高齢で発症すると帯状疱疹後神経痛になることも多いため、早めに予防しておきたいもの。2020年には新しいワクチンも登場し、多くの人がより確実に予防できるようになりました。

監修・取材協力:愛知医科大学
皮膚科学講座教授・皮膚科部長
愛知医科大学病院
渡辺 大輔先生

Contents

帯状疱疹 -基礎知識

ピリピリとした痛み。帯状にできる多数の水ぶくれ

帯状疱疹は、水ぼうそうのウイルスと同じ「水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス」によって引き起こされる皮膚病。子どもの頃に水ぼうそうにかかったことがある人ならば、誰でも発症する可能性があるので要注意です。水ぼうそうが治った後、ウイルスは神経節と呼ばれる神経の根元に長く潜伏しており、加齢や疲労、病気などで免疫力が低下すると再び活動を始め、帯状疱疹となります。50代から急増し、80歳までには3人に1人が発症するとされる身近な病気です。

帯状疱疹 -近年の動向

帯状疱疹は、わが国では年間に約60万人が発症する皮膚病です。グラフからも分かるように、免疫力が低下する50代から発症数も発症率も急激に増えています。一方、20代・30代の子育て世代は、子どもの水ぼうそうに対応することで免疫が強化され発症率が低くなっていましたが、子どもの水ぼうそうワクチンの定期接種が2014年に始まったことにより、昨今では子育て世代の発症率も増えてきています。

帯状疱疹になったとき気を付けること

  • 病気が治るまでは安静を心がけよう
  • 処方薬は指示通りに使おう
  • 入浴して温めると楽になるが、発疹があるときはゴシゴシこすらないようにしよう
  • 発疹が出ている時期は、水ぼうそうワクチンを接種していない子ども、水ぼうそうを発症したことがない子どもに感染させないように注意しよう

帯状疱疹の予防 -今すぐはじめる予防と対策

発症後3か月以上たっても痛みが続く場合は「帯状疱疹後神経痛」と診断されます。高齢になるほど帯状疱疹後神経痛になったり、その他の合併症を起こすことも多いため、米国では早くからワクチンによる予防が進められています。わが国でも、子どもの水ぼうそう予防に使用されてきた水痘ワクチン(生ワクチン)の使用が、2016年から可能になりました。また、2020年には、予防効果が高く、接種対象者が広いサブユニットワクチン(※)も認可され、予防がより確実になりました。50歳を過ぎたら、ワクチン接種による帯状疱疹の予防を考えてみてはいかがでしょうか。
※サブユニットワクチンとは、ウイルスのサブユニット(構成成分)とアジュバント(免疫反応を増強する薬剤)を組み合わせた不活性化ワクチンです。

帯状疱疹の予防 -ワクチン

NEW サブユニットワクチン(製品名「シングリックス」)

接種方法 2回(筋肉内注射)
対象者 50歳以上
予防効果 95%以上
持続期間 9年以上
副反応 接種部位の痛み、腫れ、発赤、筋肉痛、全身倦怠感
費用 1回約20,000円(2回摂取で約40,000円)※助成制度がある自治体もある


生ワクチン(製品名「ビケン」)

接種方法 1回(皮下注射)
対象者 50歳以上(妊婦、病気で免疫が低下している人は不可)
予防効果 約50%
持続期間 約5年
副反応 接種部位の痛み、腫れ、発赤
費用 約8.000円~9,000円

その他のヘルペスウイルス

「ヘルペス」とは皮膚上に水ぶくれが集まった急性炎症性皮膚病のことで、帯状疱疹はこのヘルペスウイルスの一種です。ヒトに感染する主なヘルペスウイルスは、帯状疱疹のほかに単純ヘルペスがありますが、単純ヘルペスにはワクチンがありません。よくある単純ヘルペスは、口唇ヘルペスと性器ヘルペスです。

口唇ヘルペス
単純ヘルペスウイルスが原因で起こる感染症の中で、もっとも数が多いのが口唇ヘルペスです。風邪などで免疫力が低下した時に感染しやすく、唇やその周りに軽いかゆみやピリピリした痛みなどが起こり、その後、小さな水ぶくれが複数個現れます。治っても再発することが多々あります。

性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスが原因で起こる性行為感染症。性器周辺に痛みを伴った小さな水ぶくれが多発します。初感染の場合は、性器の腫れや痛みが強く、また発熱や倦怠感,足の付け根のリンパ節の腫れ、排尿障害などの症状を伴うこともあります。また、治っても、体調が落ちたときに再発することが少なくありません。

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