生活習慣の乱れや肥満などによる脂肪肝患者が急増
非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD〔ナッフルディー〕)

非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD

原因は生活習慣の乱れ。脂肪肝の段階で発見し治療することが大切です
「肝臓の病気=お酒の病気」だけではない!近年では、生活習慣の乱れや肥満などによる脂肪肝患者が増えています。

監修・取材協力:安藤内科おなかクリニック
安藤 暢洋 院長

安藤内科おなかクリニック安藤暢洋院長
Contents

非アルコール性脂肪性肝疾患 -基礎知識

非アルコール性脂肪性肝疾患は「NAFLD〔ナッフルディー〕」と呼ばれ、アルコールやウイルスを原因としない脂肪肝の総称のことを言います。いわゆる、お酒を飲まない非飲酒者(男性 アルコール30g(ビール大瓶1本)/日以下、女性 アルコール20g(ビール中瓶1本)/日以下)にみられる脂肪肝で、その大半はメタボリックシンドロームの肝臓病変であり、動脈硬化性疾患や慢性腎臓病などのリスク因子としても重視されています。その観点から、最近では国際的に、「代謝関連脂肪性肝疾患(MAFLD)」への名称変更が提起されています。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は日本では2000万人前後存在すると言われており、特に男性では中年層、女性では高齢者層に多い傾向にあります。脂肪肝は症状が現れにくいため、放置されることが多い病態の1つ。しかし軽視して放っておくと、やがて肝炎や肝硬変、肝がんへと進行していきます。まずは定期的な検査によって、自分の身体と向き合うことから始めましょう。

非アルコール性脂肪性肝疾患 -近年の動向

2023年11月、日本生活習慣病予防協会は、日本人の多くが罹患していると思われる“新・国民病”TOP3を「機能性ディスペプシア」「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」「うつ病」と発表しました。「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」は患者が急増しており、今後生活習慣病の一つとして注意したい疾患です。

非アルコール性脂肪性肝疾患-考えられる主な種類と特徴

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、①非アルコール性脂肪肝(NAFL)と、②非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分類されます。

①非アルコール性脂肪肝(NAFL〔ナッフル〕)

肝臓に脂肪が蓄積して病気がほとんど進行しないタイプで、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の80~90%を占めています。

②非アルコール性脂肪肝炎(NASH〔ナッシュ〕)

肝臓に脂肪が蓄積するだけでなく、炎症や線維化をきたし、肝硬変や肝臓がんへと発展する進行性の病気。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の10~20%を占めています。チも重要です。

非アルコール性脂肪性肝疾患

非アルコール性脂肪性肝疾患 -原因

非アルコール性脂肪性疾患(NAFLD)は、主に肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病により発症する肝疾患。生活習慣の乱れによって患う方が多いとされています。肥満やメタボリックシンドロームの増加とともに、患者数は年々増加。特に肥満男性の増加が社会問題となっているため、日常診療では非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の男性も増えています。

非アルコール性脂肪性肝疾患 -出やすい症状

肝臓は多少の負担がかかってもすぐに症状は出ないことから、「沈黙の臓器」と呼ばれています。そのため、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)も脂肪肝の状態では自覚症状がなく、健康診断の血液検査などで指摘されて初めて気が付くケースがほとんどです。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)であってもかなり進行した肝硬変の状態になれば、他の肝硬変と同じように黄疸や足のむくみ、腹水といった症状が見られます。

非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD
(©Medical Terrace編集部)

非アルコール性脂肪性肝疾患 -検査方法

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の診断は、超音波検査などの画像検査で脂肪肝の所見があって、アルコールや薬剤などによる脂肪肝を除外することで診断されます。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の進行程度の評価の中で最も重要と考えられているのが、肝線維化(肝臓の硬さ)。線維化が進めばNAFLからNASHへと進行していきます。
NAFLとNASHの区別は厳密には病理組織で肝線維化を評価することが必要ですが、そのためには、肝臓の組織を採取する肝生検(肝臓の一部を針で採取して顕微鏡検査で観察する検査)をしないと確実に診断することができません。しかし、日本での肝生検は入院をして行うのが主流であり、NAFLD患者が約2000万人存在すると言われる中でNASHの検査は困難です。そのため、最近では線維化マーカー(採血)や超音波検査・MRI検査などを組み合わせることで、よりNASHが疑われる(線維化が進行している)症例の囲い込みが実用的となっています。

非アルコール性脂肪性肝疾患 -治療方法

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、ほとんどの場合、生活習慣を見直すことで改善できます。治療の原則は、食事・運動療法などによって、背景にある肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を是正すること。日本では、現時点で非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に有効な薬剤で保険適用されているものはありません。そのため、非アルコール性脂肪肝(NAFL)の場合は食事・運動療法が中心。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の場合は、肥満を伴っている際は、はじめに体重の7%を目標に減量し、徐々に標準体重を目指すことがすすめられています。また、脂質異常賞や高血圧、糖尿病を伴っている場合は、それぞれに対する薬物療法を行うことがすすめられています。

非アルコール性脂肪性肝疾患 -今すぐはじめる予防と対策

食生活や運動習慣を見直すことで非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を予防できます。

【食事】
□主食・主菜・副菜をそろえる 
□糖分や脂肪分の多い食事はなるべく控える 
□食物繊維やビタミン類の多い食品を選択 
□アルコールを控える

【運動】
脂肪は筋肉によって燃焼されるため、まずは筋肉量を増やすことが脂肪肝の解消の近道。軽い筋トレや、インナーマッスルの強化をはじめ、無理のない範囲で適度な負荷をかけながら行う有酸素運動(ジョギングや水泳、サイクリングなど)がおすすめです。

非アルコール性脂肪性肝疾患 -自己チェック

健康診断の結果をチェックしてみよう。

ALT(GPT) 
基準値 30 IU/L以下
高値の場合、急性肝炎・劇症肝炎・慢性肝炎・アルコール性肝炎・脂肪肝・肝硬変・肝がんなどの病気が疑われます。
γ-GTP 
基準値 男性80 IU/L以下、女性30 IU/L以下
高値の場合、急性肝炎・慢性肝炎・肝硬変・肝がん・アルコール性肝障害・非アルコール性脂肪性肝炎・薬剤性肝障害・胆道系疾患などの病気が疑われます。
BMI 
基準値 25未満
腹囲 
基準値 男性85cm以下、女性90cm以下
※上記の基準値は検査機関によって異なります。

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