口内炎 から隠れた病気に気がつく
ほとんどは自然治癒することが多い 口内炎 ですが長期間症状が続いたり、いつもとは異なる状態だったりする場合は別の病気が隠れているかもしれません。
監修・取材協力:愛知学院大学 歯学部 顎顔面外科学講座
後藤 満雄 准教授
口内炎 -基礎知識
原因はさまざま似た症状で別の病気も
口内炎とは頬の内側や舌など、口の粘膜に炎症が起きた状態のことを言います。赤みや腫れ、白斑(白くポツとできる状態)、ただれなどが起き、痛みやしみを伴うこともあります。
原因はさまざまで、外的刺激によるもの、ウイルスや細菌によるもの、アレルギーによるもの、また、直接的ではありませんがストレスや栄養の偏りによって症状が出る場合もあります。
外的刺激による口内炎は1週間から2週間ほどで自然に治癒します。ウイルスに感染すると、複数の口内炎ができやすくなります。ストレスや風邪をひいて体力や免疫力が低下すると口内炎ができることもあります。
別の病気で口内炎に似た症状が出ることがあるので、注意が必要です。口内炎だと思ってそのままにしていたら、口腔がんだったということも。口腔がんの場合、前兆症状があるため早期に発見、治療を行うことが大切です。
口内炎 -原因は主に4タイプ
外的刺激
義歯が接触する、歯ブラシが当たる、口の中を噛んでしまう、口の中をやけどしたなど、傷ができたことが原因になります。原因を排除することで、自然治癒します。
ウイルス·細菌
ヘルペスや帯状疱疹によるウイルスが原因で口内炎になることがあります。顔の皮膚だけでなく、口の中にできることもあるためです。ウイルスの場合は多発します。また、舌や粘膜にできた傷から細菌が感染することがあります。
アレルギー
金属アレルギーや薬剤アレルギー、まれに果物によるアレルギーが原因になります。金属アレルギーの場合、歯の被せ物に含まれている成分に反応していないか、パッチテストを受けると良いでしょう。
ストレス·栄養の偏り
ストレスや栄養の偏りにより、免疫が低下し、口内炎ができることがあります。
口内炎 -知っておきたい病気·症状
白板症(はくばんしょう)
頬粘膜、舌に白い板状の病変ができます。痛みはありません。口腔潜在的悪性疾患の代表的な疾患で、比較的、高い頻度で発症します。白板症のうち約5%ががんに変化しています。喫煙や過度な飲酒が危険因子とされています。
紅板症(こうばんしょう)
舌や歯肉に真っ赤な部分ができます。無症状であったり、ひりひりする痛みがあったりします。紅板症のうち40-50%ががんに変化します。
扁平苔癬(へんぺいたいせん)
頬粘膜の両側や舌に炎症が起き、白いレース状の模様ができるのが典型的な症状です。歯肉、皮膚にできることもあります。飲食でしみることがあり、口内炎が悪化した状態と思われることもありますが、別の疾患です。比較的多くみられる病気で、特に中年以降の女性に多くみられます。
はっきりとした原因は不明ですが、膠原病の病態にも似ており、自己免疫が関わっているとされています。扁平苔癬のうち3-4%ががんに変わる可能性があるとされています。
口腔がん
日本では、口腔がんのうち約40%が舌がんです。口腔がんは首のリンパ腺に転移しやすく、時間が経てば経つほど転移する確率が高くなります。ステージⅠまたはⅡで治療ができると治療成績が良く、5年生存率は病態にもよりますが、約80~90%とされています。ステージⅢやⅣになると治療成績が極端に低下してしまうので、早期発見が重要になります。
舌がんで最も多いのは舌の横にできる症状です。前述した口腔潜在的悪性疾患がみられる場合は早めに口腔外科を受診しましょう。
ほかのがんと同じように、一般的には50代以降での発症が多くありますが、近年は若年層での発症も多くなっています。
口内炎 のはなし –医療最前線!!
●ビタミン不足は 口内炎 の原因になる?
ビタミンA、ビタミンB2やビタミンB6は粘膜の健康の維持に必要な栄養素です。そのため、これらの栄養素を補うと理論上、炎症はおさまりますが、ビタミン不足だけで発症するわけではないため、口内炎が繰り返されることはあります。
口内炎 -今すぐはじめる予防と対策
治りにくい、複数できる、繰り返される口内炎が10日以上続く場合は口腔外科を受診しましょう。異変に早く気がつけるよう、普段から口の中をチェックしておくと良いでしょう。
口内炎 -自己チェック
次のような症状がある場合は早期に受診しましょう。
□ 潰瘍ができている(ただれている)?
□ 複数できている?
□ 単発であっても口内炎か疑わしい。
□ 10日間ほど経っても治らない。
□ 繰り返しできる。
帯状疱疹 帯状疱疹 は、体の左右どちらか一方にピリピリと刺すような痛みや、赤い斑点、水ぶくれが帯状にあらわれる皮膚の病気。水ぼうそうになったことがある人は誰もが発症する可能性があり、ストレスや体調不良など免疫機能の低下が引き金となるため、近年では20~40代でも増加傾向にあります。
免疫力 を高める体づくり 元気で健康に過ごすために、 免疫力 は不可欠です。免疫力は病原菌から身を守り、健康を維持し、身体を若々しく保つ力があると言われています。免疫力が低くなると、病気だけでなく新陳代謝も低下して、さまざまな肌トラブルがおこることもあります。