がんや循環器・呼吸器系疾患などの発症リスクが高まる
たばこ による健康影響

たばこによる健康被害

「やめたくてもやめられない」ニコチン依存症は治療が必要な病気です。
日本人の主な死因と言われるがん、脳卒中、心筋梗塞をはじめ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)やぜんそくなどの呼吸器疾患、潰瘍、妊娠周産期の異常など、喫煙は数多くの疾患やトラブルに深く関係しています。

監修・取材協力:よもぎクリニック
水谷 宏 院長

Contents

たばこ による健康影響 -基礎知識

「百害あって一利なし」と言われるほど健康への影響が大きいたばこ。煙には4000種類以上の化学物質が含まれ、その中に有害物質は200種類以上、発がん性物質は60種類以上含まれると言われています。喫煙は周囲の非喫煙者にも影響を及ぼします。子どもが受動喫煙から受ける健康への影響は大人以上に深刻で、乳幼児突然死症候群(SIDS)、小児ぜんそく、気管支炎、中耳炎などの危険因子として知られています。また、流産や早産のリスクが高まり、胎児の発育にも悪影響を及ぼすため、妊婦本人の禁煙はもちろん、家族の禁煙も重要です。

たばこによる健康影響
(©Medical Terrace編集部)

たばこ による健康被害 -近年の動向

近年拡大を見せている加熱式たばこ。一見受動喫煙の影響が少ないように見えますが、日本呼吸器学会は「健康に悪影響がもたらされる」「受動吸引による健康被害が生じる」可能性があると、警鐘を鳴らしています。

たばこ による健康被害 -出やすい症状

たばこが関わる病気としてまず挙げられるのが、喫煙による薬物依存症の一つ「ニコチン依存症」。脳内にはニコチンが結合すると快感を得られるニコチン受容体があり、喫煙によってニコチンを摂取すると、快感を生じさせる物質ドパミンを大量放出し、「落ち着く」「おいしい」という感覚を得られます。30分もすれば体内のニコチンが切れて、イライラなどの禁断症状が出るため、その症状を解消しようとたばこを吸い、喫煙がやめられなくなります。

また、近年急増しており、“肺の生活習慣病”とも言われるのが「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」です。たばこ病とも言われ、喫煙によって煙に含まれる有害物質を長期間吸い込むことで肺に炎症が起こる進行性の病気。患者の90%が喫煙者で、中高年の発症率が高い傾向にあります。階段や坂道など労作時に息切れが現れるため、風邪や加齢のせいと見過ごさないよう注意が必要です。近年、慢性閉塞性肺疾患(COPD)による死亡者数は増加。その他、喘息、肺気腫など呼吸器系の疾患を発症するリスクも高めるといわれています。

喫煙によって「がん」の発生リスクも高くなると言われています。たばこの煙には60種類以上の発がん性物質が含まれると言われ、肺がんだけでなく、肝臓、胃、膵臓、大腸、咽頭、食道、血液などさまざまながんの発症リスクが高くなることが分かっています。たばこを吸う人のがん全体の発生率は、吸わない人と比べて男性1.6倍、女性1.5倍と言われ、禁煙は最大のがん予防策になります。

たばこを吸うと体内に一酸化炭素が取り込まれ、循環器系の疾患を引き起こす可能性があります。一酸化炭素は酸素よりも赤血球にあるヘモグロビンと結合しやすいため、体内の酸素が不足し、酸素欠乏によって動脈硬化を進行させ、脳卒中や心筋梗塞、狭心症、くも膜下出血など循環器系の疾患を発症リスクが高くなります。50歳以下の若年層でも大きなリスクになります。


たばこ による健康影響 -治療方法

2006年4月より、禁煙治療に健康保険が適用されるようになり、2019年5月までに16700を超える医療機関で保険診療が実施されるようになりました。基準を満たす患者に対し、医師の指導のもと12週間の治療が行われ、主にニコチンを含まない飲み薬やニコチンパッチが用いられます。「本数を減らす」「軽いたばこに変える」では意味がありません。自身と周囲の人の健康のために、強い意志で禁煙に取り組みましょう。

たばこ による健康影響 -ニコチン依存症判定テスト

5つ以上が該当する場合、依存症である可能性が高く、保険診療対象となります。
□【1】自分が吸うつもりよりも、ずっと多くのたばこを吸ってしまうことがありましたか。
□【2】禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことはありましたか。
□【3】禁煙したり本数を減らそうとしたときに、たばこがほしくたまらなくなることがありましたか。
□【4】禁煙したり本数を減らしたとき、次のどれがありましたか。
(イライラ、神経質、落ち着かない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)
□【5】【4】でうかがった症状を消すために、またたばこを吸い始めることがありましたか。
□【6】重い病気にかかったとき、たばこはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。
□【7】たばこのために自分の健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。
□【8】たばこのために自分の精神問題(※)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。
□【9】自分はたばこに依存していると感じることがありましたか。
□【10】たばこが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか。
※禁煙や本数を減らしたときに出現する離脱症状(いわゆる禁断症状)ではなく、喫煙することによって神経質になったり、不安や抑うつなどの症状が出現している状態。

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