家族が認知症になったらどうする?
認知症

車椅子の老夫婦 認知症 イメージ

正しい理解と対応を知り、恐れずに向き合おう。
家族の誰かがいつなってもおかしくない「 認知症 」。偏った情報から、認知症に対して絶望的なイメージを抱く方も少なくありません。しかし、正しい対応と適切な治療によって改善するケースもあります。まずは、認知症を理解することから始めましょう。

監修・取材協力:おくむらメモリークリニック
奥村 歩 理事長

おくむらメモリークリニック 理事長 奥村 歩
Contents

認知症 -基礎知識

認知症とは、年齢を重ねるにつれて、脳が変化して、脳の働きが低下し、今までのように「その人らしく」暮らしていくことに支障が出る状態のことです。
認知症の症状には、記憶障害や視空間認知の障害などを指す「中核症状」と、中核症状により、ストレスや焦燥感を抱くことで発生する「BPSD(認知症の行動・心理症状)」があります。また、認知症とひと言で言っても「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」などの種類があり、それぞれ症状や合う薬も異なります。もっとも代表的なのがアルツハイマー型認知症ですが、症状が複雑で早期発見が遅れがちなのがレビー小体型認知症です。もの忘れの症状に加え、幻視やパーキンソン症状、薬に対する過敏症などがあらわれます。レビー小体型認知症は、抗認知症薬の服用によって症状が改善することが多いため、このような症状がある場合は早めにかかりつけ医に相談しましょう。
いずれにしても認知症に大切なのは、早期発見と早期診断です。治療開始が早ければ早いほど、その人らしく過ごせる時間が長くなるでしょう。
また、認知症は予防することもできます。近年の研究で分かってきたのが、人と関わることが認知症予防になるということです。趣味を持つ、頭を使う、運動することはもちろん一定の効果があります。中でも、将棋やマージャン、社交ダンスなどが特に認知症予防に有効であることが分かりました。ひとりで黙々と行うよりも、人とコミュニケーション取りながら何かに取り組む方がよいということです。
認知症と診断されると、家に引きこもりがちになる方も少なくありません。ご家族はデイサービスを利用するなどして積極的に人と関わる機会をつくってあげてください。
食事では「地中海式食事法」がよいとされています。特に65歳以上の方の場合、体重が減少しがちです。肉や魚などたんぱく質と炭水化物をしっかり摂り、野菜や果物、発酵食品などをバランスよく摂取しましょう。
認知症には周囲の正しい知識と適切な対応が重要です。認知症と診断されたからと絶望するのではなく、うまく向き合いながら、「その人らしく」イキイキと毎日を過ごす方法を見つけましょう。

高齢者の認知症の種類と割合
「三大認知症」と言われるのが「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」で、主に65歳以上の高齢者に多く見られます。
また、アルツハイマー型認知症は女性に多く、レビー小体型認知症は男性に多い傾向にあります。

認知症 -近年の動向

認知症と診断される高齢者の数は年々増加傾向にあり、2012年には462万人だったのが、2015年に525万人、2020年には631万人にのぼっています。2025年には推定730万人なると予想されており、1000万人に到達するのもそう遠くはないでしょう。これは、寿命が延びていること、そして認知症が早期に診断される人が増えたことも要因のひとつと考えられます。

認知症 -出やすい症状

認知症の症状には大きく、【中核症状】と【BPSD】の2つがあります。
【中核症状】…直近のことを忘れてしまう記憶障害や、視覚に入ってくる外界の物質との間合いをとる視空間認知の障害、手順に従って遂行する遂行実行機能の低下、会話能力の衰えなどがあります。
【BPSD】…情報能力の低下によって自分らしくいられなくなったり、人とうまく関われないことによってストレスを感じたり、不安、妄想などが生じることです。

認知症 -考えられる主な種類と特徴

中核症状と「ククカカ」に注意を!
アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の中でももっとも一般的です。記憶障害や視空間認知の障害、遂行実行機能の障害などが主な症状ですが、人によっては妄想や徘徊、うつ症状を伴うこともあります。


症状が複雑で判断が難しい認知症
レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型に次いで多い認知症です。幻視や目が見えにくくなるなど視機能の異常が起こる点が特徴的です。また、市販薬などの服用により、症状が悪化するなどの副作用が起こる場合があるため注意が必要です。


脳血管を大切にすることが重要
脳血管性認知症

脳卒中や脳梗塞などによる脳機能の低下が原因で起こる認知症。アルツハイマー型と同じような記憶障害や視空間認知の障害が主な症状ですが、人によっては運動麻痺や言語障害などを伴う場合もあります。

認知症 -治療方法

本人のできることや、やりたいことを尊重しながら快適な環境をつくることで、認知症の進行を遅らせ、家族や介助者の負担を軽くしていくことが大切です。介護保険制度の利用によるデイサービスが有効ですのでうまく活用しましょう。
また、症状の進行を遅らせる薬や不安や不眠などの症状を和らげる薬を使用することで、その人らしくイキイキと暮らせるようサポートしていきます。特に、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の場合は適切な薬物治療を行うことで改善するケースが多くみられます。

認知症 -今すぐはじめる予防と対策

日常的なウォーキングは認知症予防につながります。水泳、サイクリングのほか、日常的な家事をしっかり行うだけでも効果はあります。特に、人のために行う、人と一緒に行うなど「人との関り」を重視してみてください。
食事は、地中海式食事法をベースに、炭水化物や発酵食品などバランスよくしっかり摂ることを心がけます。特に65歳以上の場合は体重を維持することが大切です。

ご家族など周囲の方がさり気なくチェック!

もの忘れについてのチェックリスト
□ 同じことを言ったり、訊いたりする
□ 人と会う約束やその日時を忘れる
□ 最近の出来事で印象的だったはずのことが思い出せない
□ 電話で受けた内容が伝達できない
□ 水道やガス栓の閉め忘れが目立つようになった

性格の変化についてのチェックリスト
□ 夫婦げんかが多くなった
□ 怒りっぽくなった
□ 以前よりもひがみっぽくなった
□ よく愚痴を言うようになった
□ ひとつのことに執着するようになった
□ 憂鬱そうになった

それぞれにつき 0~1…青信号  2~3…黄信号   4~…赤信号

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