全身倦怠感が続く脳神経系の病気
慢性疲労症候群

休んでも回復しない激しい疲労が、半年以上続くナゾの現代病
「疲れ」は誰もが感じる症状ですが、激しい全身倦怠感がいつまでも続く病気があります。脳神経系や免疫系の異常が関わるといわれる「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」。1984年に初めて報告された現代病で、国内外で研究が進められています。

監修・取材協力:藤田医科大学 七栗記念病院
内科 客員教授
桑名市総合医療センター
膠原病リウマチ内科 顧問
桑名市総合医療センター
松本 美富士先生

Contents

慢性疲労症候群 -基礎知識

病気と前向きに付き合うセルフマネージメントが大切!

慢性疲労症候群は、1984年、米国で初めて報告された現代病です。健康な人の「疲れ」とは異なり、免疫異常により、脳に炎症が起こることで「激しい疲労」が自覚される病気です。従来の病名では誤解を招きやすいため、現在では「筋痛性脳脊髄炎(きんつうせいのうせきずいえん)/慢性疲労症候群(ME/CFS)」が正式名称になっています。

一般的な血液検査、CT検査、MRI検査などの検査では異常が見つからないことも大きな特徴です。そのため、周囲に理解されずにつらい状況に陥りやすく、専門医も少ないことから、適切な診断や治療を受けることができない人も少なくありません。

現在、日本国内の患者数は十数万人といわれています。一番多い年代は30代後半~40代ですが、年齢層は子どもから高齢者までと幅広く、子どもの場合は不登校になることもあります。

慢性疲労症候群 -近年の動向

慢性疲労症候群は、わが国でも30年以上にわたって調査・研究されており、原因はまだ不明ですが、昨今、脳神経系の炎症性の病気であることが明らかになりました。治療は対症療法が中心ですが、症状を悪化させないためには、病気を受け入れ、前向きに付き合っていくセルフマネージメントも非常に大切になっています。

慢性疲労症候群 -出やすい症状

慢性疲労症候群の特徴は、ある日突然、原因不明の激しい全身倦怠感に襲われ、その症状が6か月以上続くこと

微熱や頭痛、関節痛、睡眠障害、認知機能の低下、抑うつ気分などがあわせて起こることもあります。その結果、月に数回以上、仕事や学校を休むことになり、社会生活に深刻な影響を与えます。

あなたの疲労度は⁉
パフォーマンスステータス(PS)による疲労・倦怠感のレベル

パフォーマンスステータスとは、慢性疲労症候群などの各種病気を患う人の疲労レベルを判断するための指標です。慢性疲労症候群の定義に当てはまる疲労は、PS3以上の状態。実際、慢性疲労症候群と診断される人の多くはPS6やPS7の状態であるといわれます。

PS 0 倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限を受けることなく行動できる
PS 1 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労を感じることがしばしばある
PS 2 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である
PS 3 全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である ※休日は含まない
PS 4 全身倦怠感のため、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である ※休日は含まない
PS 5 通常の社会生活や労働は困難である。軽労働は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である
※軽労働とは、数時間程度の事務作業などの身体的負担の軽い労働
PS 6 調子の良い日には軽労働は可能であるが、週のうち50% 以上は自宅にて休息している
PS 7 身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である ※ほとんど自宅で生活
PS 8 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50% 以上は就床している ※外出は困難
PS 9 身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている

《診断基準》
PS 0PS 2 通常の疲労
PS 3PS 9 重い疲労。慢性疲労症候群や他の病気の疑いあり

慢性疲労症候群 -自己チェック

上3つの項目は必須。その他、複数の項目にチェックがついた場合は、慢性疲労症候群の疑いあり

□ ある日、突然に起こった疲労である
  ※以前より続いている疲労が次第に激しくなったケースは当てはまらない
□ 6か月以上続いている
□ 休んでも回復しない
  ※一晩寝れば回復する場合は当てはまらない
□ 朝起きても熟眠感がない
  ※7時間前後の十分な睡眠をとっている場合のみ
□ 長く立っていると姿勢が保てない
  ※朝礼などで座り込んだり、倒れたりする
□ 認知機能に異変がある
  ※物忘れが激しい、計算ができない、人の名前が分からない、漢字がかけないなど

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