脳神経の異常で起こる国指定の難病
パーキンソン病

手足のふるえや動きの異常、歩行障害、転倒の4大運動症状が特徴です
古くから世界中の人々を悩ませてきた難病「パーキンソン病」は脳神経の病気です。近年では4大運動症状のほかに、幻覚や認知症、うつなどの症状が時に現れることも分かってきました。薬物療法のほか外科療法なども進歩していますので、前向きに病気と付き合っていきましょう。

監修・取材協力:岐阜大学 大学院
医学系研究科 脳神経内科学分野 教授
岐阜大学医学部付属病院
下畑 享良先生

Contents

パーキンソン病 -基礎知識

治療の基本は薬物療法。進行期は外科手術も選択肢に

 「手足がふるえ、体が動かなくなる難病」というイメージがあるパーキンソン病は、19世紀初頭、イギリスの外科医ジェームズ・パーキンソンが報告したことから、その名がつけられました。

パーキンソン症状を起こす、パーキンソン病以外の病気を総称して「パーキンソン症候群」と呼びます。数多くの病気がありますが、代表的なものは「多系統萎縮症」「進行性核上性麻痺」「Fahr病」の3つの病気。どれも治療法や長期経過がパーキンソン病とは異なりますが、パーキンソン病との見分けは専門医でないと難しいので脳神経内科で診断してもらいましょう。

パーキンソン病 -出やすい症状

患者のほとんどに現れるという4大症状は、手足がふるえる「振戦」、腕を曲げ伸ばしにくい「筋強剛」、動きの速度が落ちる「運動緩慢」、後ろに倒れやすくなる「姿勢保持障害」です。また、これらの運動症状以外に、幻覚・妄想、嗅覚低下、認知症、うつ、睡眠障害、腰痛、湿疹などが現れることもあります。進行期に入ると、手や足が変形・拘縮する「ジストニア」が起こるため、リウマチと間違えやすくなります。

これらの症状は、脳神経の障害が原因で起きているため、パーキンソン病は脳神経内科が専門の病気。検査方法は、血液検査や頭部CT・MRIでは異常が出てこないため、心臓検査「MIBG心筋シンチ」や脳検査「ドパミントランスポーター画像」を行います。

パーキンソン病 -注意した方がよい人

現在、日本における患者数は1000人に1人~1.5人の割合

50歳以上で発症することが多いため、60歳以上の患者数は100人に約1人と、高齢者層で多くなっています。超高齢社会が進む日本では、今後一層、患者数が増えると懸念される病気です。なお、40歳以下で発症する「若年性パーキンソン病」も時にあるため、若年層でも注意が必要です。パーキンソン病は国の指定難病のため、医療費助成などの公的支援も上手に利用していきたいものです。

世界のパーキンソン病患者数(予想)

世界的な高齢化で、2015年に690万人だったパーキンソン病の患者数は右肩上がりに増加し、2040年には1420万人になると予想されています。

パーキンソン病 -4大症状

手足がふるえる
振戦(しんせん

椅子に腰かけて膝に手を置いている時など、何もしていない安静時に手や足がふるえる症状が起こります。非対称性も特徴で、片側の手足に、1秒間に4~6回程度のふるえが現れます。


腕の曲げ伸ばしがしにくい
筋強剛(きんきょうごう

腕や足の曲げ伸ばしがしにくくなる症状ですが、本人には自覚がないため、診察で分かることがほとんどです。中に歯車が入っているようにカクカクと曲がる「歯車様」や、鉛の管のように動きが硬くなる「鉛菅様」のタイプがあります。


歩くスピードが落ちる
運動緩慢(うんどうかんまん

動くときのスピードや振幅(動きの大きさ)が低下します。歩く際に歩幅が小さくなる「小歩症」や、足がすくんで一歩目が踏み出せない「すくみ足」になることも。すくみ足の場合は、すくんだ足の前に付添人が足(障害物)を出すと、目標ができて一歩が出やすくなります。

後ろに倒れやすい
姿勢保持障害

パーキンソン病が進行し、両手足に症状が現れてくると姿勢を保つことが難しくなります。重心が後ろに移動しやすいため、後方に倒れることが多くなるのです。日常生活で問題になるのは、「洗濯物を干す」「高いものを取る」「ドアノブを引く」「タンスを開ける」などの動作。後ろに倒れやすく危険なため、気をつける必要があります。

パーキンソン病 -治療方法

治療の基本は薬物療法

パーキンソン病では、中脳にある神経細胞が作るドパミンが減少するため、これを補う薬が投与されます。薬は数多くありますが、もっともよく使われるのはL-ドーパ製剤です。一方、進行期には、胃ろうを作ってL-ドーパ製剤を持続投与する「LCIG療法」や、脳に電極を入れる外科手術「脳深部刺激療法(DBS)」など、進行期でも有効な治療の選択肢もあります。

パーキンソン病 -患者の歩行の特徴

□ 歩くときに手がふるえる
□ 歩幅が小さい
□ 手の振りが左右で違う
□ 一歩目が出しにくい「すくみ足」がある
□ 歩き始めるとつんのめるように進む「突進現象」がある
□ 目の前に障害物があると、すくみ足が解除される「逆説的歩行」がある

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