診断が難しいがん。健康診断で早期発見を
膵臓がんと膵臓の病気

早期発見が難しい膵がん
大きくならないと見つけることができず、見つかってからは進行が早く、5年生存率が低いがんです。治療もここ10年で変化しているので、発見さえできれば寿命を延ばすことができます。

監修・取材協力:愛知県がんセンター
消化器内科部 部長
原和 生 先生

Contents

膵臓がんと膵臓の病気 -基礎知識

膵がん患者は年々、増えています。早期に発見できれば治りますが、診断が難しく、発見できた時は進行していることが多く、5年生存率は10%を下回っています。

膵がんのリスクが高い人は大きく2タイプに分かれ、一つは血縁関係の家族に膵がんの人が2人いること、もう一つは喫煙習慣や過度な飲酒をしているなどの後天的な原因がある場合です。後天的な膵がんの場合、急激に糖尿病が悪化した時は要注意です。慢性膵炎の人はがんの発生リスクが高まります。ハイリスクの人は膵のう胞に注意しなければいけません。

膵のう胞は2種類あり、のう胞そのものが悪性化する場合と、のう胞とは別の部位に膵がんができる場合があります。のう胞そのものが悪性化する場合は、進行が遅いため、経過観察をしながら必要時に手術をすれば問題はありません。

しかし、膵のう胞とは別の場所に腫瘍ができる場合は突然、膵がんを発生して急速に進行するため、特に注意が必要です。

膵のう胞を発見したら経過観察をみることが大切です。若い人なら半年に1回、超音波内視鏡、またはMRIで検査を受けることが望ましいです。膵のう胞の発見は健康診断などで行うお腹のエコー検査がきっかけになる場合が多くあります。

膵がんの年次推移(男女合計・全年齢)1975年から約6倍の膵がん患者が増えている。
膵臓の主な働きは消化液の分泌と血糖の調整です。

膵臓がんと膵臓の病気 -近年の動向

膵がんの治療は10年前と比較すると、劇的に変化しています。

有効な薬物療法も登場しています。
また、2019年は「ゲノム医療元年」と言われています。腫瘍の遺伝子を分析して、有効な薬剤を同定することができる時代がやってきています。

膵臓がんと膵臓の病気 -出やすい症状

初期の段階や多くの膵臓の病気の場合は無症状の場合がほとんどです。

膵がんの場合、進行すると、上腹部痛や背部痛、吐血、下血、腹水が現れます。

膵臓がんと膵臓の病気 -考えられる主な種類と特徴

診断が難しいため、ハイリスクの人は専門医に相談を
膵がん

罹患数に対する死亡数の割合が極端に高いがん。初期の自覚症状はなく、進行すると上腹部痛や背部痛が起き、末期になれば吐血、下血、腹水などが現れます。膵がんの人が身内にいる人、糖尿病と診断された人、膵炎や膵のう胞と診断された人は検査を受けることが勧められています。


経過観察して膵がんの早期発見につなげる
膵のう胞

膵臓の中にできる水ぶくれです。無症状ですが、検診や人間ドックなどで
行われる腹部超音波検査、CT検査などで発見されることが多くなりました。40代に多く発症します。のう胞そのものが腫瘍になるもの、のう胞が見つかると、他の部分で腫瘍が発症することがあるため、経過観察して膵がんの早期発見に努めることが大切です。
40代以降で多く発症します。膵のう胞がある人は、膵臓の悪性腫瘍がんができやすい傾向があります。


アルコールや胆石が原因
急性膵炎

膵臓で生産、貯蓄されている消化酵素が過剰に分泌されたり、膵管の内圧が上昇したりすることで膵臓自体を消化してしまう病気。重症化すると呼吸や循環腎不全などの多臓器不全や感染症を併発します。主な原因はアルコールや胆石。絶食などして治療します。

長期間、膵臓が炎症を起こしている状態
慢性膵炎

膵臓が炎症を繰り返し、細胞が少しずつ破壊されて膵臓が硬くなったり(繊維化)、変形したりする病気です。40〜50代で多く発症し、アルコールの飲み過ぎが主な原因です。食事やアルコールをとった後で腹痛があり、このような状態が慢性的に起こります。膵がんが発生する可能性が高くなります。

膵臓がんと膵臓の病気 -今すぐはじめる予防と対策

自覚症状がないため、健康診断や人間ドックによる定期的な検診を行うことが大切です。

膵臓がんと膵臓の病気のリスク -自己チェック

□ 慢性膵炎にかかっている
□ 糖尿病にかかっている
□ 血縁のある家族に膵がんの人がいる
□ 肥満気味
□ 喫煙をしている
□ 飲酒することが多いまたは、飲酒量が多い
□ 血糖値が急に低くなった

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