胃がんや胃潰瘍のリスクを高める菌
あなたの胃にもいるかも?ピロリ菌

除菌をして、胃がんや胃潰瘍のリスクを大幅に減らそう!
最近、みぞおちが痛い、胃に不快感や吐き気がある、胃もたれを感じるなどの症状はありませんか。近年の研究で、胃の病気の多くに ピロリ菌 (ヘリコバクター・ピロリ)が関わっていることが分かってきました。早めの検査でピロリ菌の有無を確かめ、除菌しておきませんか。

監修・取材協力:日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本内科学会認定医
赤坂あきたクリニック
秋田 國治院長

Contents

ピロリ菌 -基礎知識

子どもの頃に感染し大人になって慢性胃炎に!

日本人の半数以上が感染しているといわれる「ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)」は、口などから入り込み、胃の粘膜に生息する細菌です。今から40年近く前に発見され、さまざまな胃の病気に関わることが分かってきました。

ピロリ菌は、子どもの頃に感染して胃の粘膜に炎症を起こしますが、自覚症状はありません。長い年月をかけて胃が萎縮してくると、胃の不快感や胸やけなどが起こり、慢性胃炎(萎縮性胃炎)と診断されます。この慢性胃炎が胃がんの大きな原因のひとつであることが、昨今、明らかになりました。また、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者の90~100%がピロリ菌に感染していることも分かっています。

2014年のピロリ菌感染率は、70代で約6割、60代で約5割、50代で約4割、40代で約3割、30代以下では1割以下でした。年代別の感染率は年々減少しており、衛生環境の改善より、ピロリ菌の保菌者が減少していることが分かります。

ピロリ菌とは⁉

ピロリ菌の正式名は「ヘリコバクターピロリ」。ヘリコとは「らせん」、ピロリは「幽門」(十二指腸につながる胃の細い部分)の意味で、胃の粘膜に生息しているらせん形の細菌。胃の中は酸が強いため細菌は存在できないと長らく考えられていましたが、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素によって生成されるアンモニアを利用して、身の回りをアルカリ性にすることで胃酸を中和し、生存を可能にしています。

ピロリ菌 -近年の動向

現在では、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍と診断されると、ピロリ菌の除菌治療を健康保険適用で受けることができます。胃がんは、日本人のがん死亡数順位(2019年)で大腸がんについで第2位を占めるがんですが、ピロリ菌を除菌すれば、この胃がんリスクを大幅に減少することができるわけです。ただし、胃がんのリスクはゼロにはなりません。除菌治療後も必ず定期的に胃検査を受けることががん予防には大切です。

ピロリ菌 -注意した方がよい人

ピロリ菌に感染するのは、胃の発達が未熟な5歳以下の子どもたち

上下水道の整備がされていないなど、不衛生な環境で幼児期を過ごすと感染しやすくなります。現在のわが国は環境インフラが整っているため、若い人の感染率は低く、年代が上にいくほど感染率が高くなっています。ただし、気を付けたいのは親から子への感染。ピロリ菌保菌者が、自分が使ったスプーンや食器で子どもに食事を与えると、感染リスクが高まるため注意しましょう。

ピロリ菌と関係が深い病気

みぞおちの痛みに悩まされる
慢性胃炎

胃に慢性的な炎症が起こり、みぞおちの痛みや胃部不快感、吐き気などの症状を起こす胃の病気。ながらく加齢変化と考えられてきましたが、近年、ほとんどの慢性胃炎はピロリ菌の感染によって起こることが明らかになりました。中でも健康診査などで「萎縮性胃炎」と診断されたら、ピロリ菌感染を強く疑って、かかりつけ医に相談しましょう。


胃の痛みや出血が起こる
胃潰瘍

胃から分泌される胃酸と、胃酸から胃の壁を守る粘液の分泌のバランスが崩れることで、胃酸によって胃壁が傷つき、痛みを感じたり、出血を起こす病気です。近年ではピロリ菌が胃潰瘍の発症に大きく関わっていることが明らかになりました。このほか、ストレスやお酒の飲み過ぎ、非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)の副作用も胃潰瘍との関連が深いと考えられています。


早期発見で治る
胃がん

胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞が、何らかの原因でがん細胞となり、増えていく病気。がん細胞が粘膜または粘膜下層までにとどまっているものを「早期胃がん」、筋層より深く達したものを「進行胃がん」といいます。発生要因としては、ピロリ菌の感染や喫煙、高塩分食品の摂取などが挙げられます。日本では、早期発見でほとんどを治すことができるようになってきました。

ピロリ菌 -治療方法

ピロリ菌の感染有無などを調べる検診は、市町村やクリニックなどが実施しているABC検診(胃がんリスク検診)です。自覚症状がなくても、一度受けておくと安心でしょう。治療は1週間程度、抗菌剤を服用するだけの簡単なものです。

ピロリ菌 -リスク度チェック

□ 胃潰瘍、もしくは十二指腸潰瘍にかかったことがある
□ 慢性胃炎、もしくは胃がんと診断されたことがある
□ 家族が慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんのどれかにかかったことがある
□ 胃が痛むことがある
□ 胃もたれすることが多い
□ ピロリ菌の検査をしたことがない
□ 家族にピロリ菌感染者がいる
□ 生まれた頃は、家の上下水道がまだ整っていなかった

3つ以上チェックが付く場合は、ピロリ菌検査を受けてみましょう。

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