
繰り返す胸やけやなかなか治らない咳、それは胃酸が食道を傷つけているサインかも
日本で近年増加中。粘膜障害のある逆流性食道炎は10人に1人程度みられると推定。食生活の変化やストレスの多い現代社会において、逆流性食道炎はもはや「国民病」ともいえる身近な疾患になっています。
監修・取材協力:岐阜茜部はせがわ内科クリニック
長谷川 恒輔 院長

逆流性食道炎 -基礎知識
なぜ胃酸が逆流するのか、その仕組みと原因
逆流性食道炎は、胃の内容物が食道へ逆流し、その強い酸によって食道の粘膜が炎症を起こす疾患です。 本来、食道と胃のつなぎ目には「下部食道括約筋」という筋肉があり、逆流を防ぐバルブの役割をしています。しかし、この筋力が加齢などで低下したり、胃の圧力が上がったりすることでバルブが緩み、胃酸が食道へ漏れ出してしまうのです。食道は胃と違い、酸から身を守るバリアが弱いため、短時間の接触でも炎症を起こします。
逆流性食道炎 -近年の傾向
現代人に多い原因と若い世代の増加
近年、20~30代の若い世代でも患者数が増加しています。その背景には、偏った食生活やピロリ菌感染率の低下に加えて、現代特有の姿勢の悪さなどが挙げられます。スマートフォンやパソコン操作による前かがみの姿勢(猫背)は、腹部を圧迫して胃酸を上に押し上げます。他にも、食事後すぐに横になったり、ストレスなども大きな要因となっています。また、胸やけ以外の症状で疾患が見つかることも少なくありません。胃酸が喉まで達すると、「喉の違和感」「声枯れ」「耳の奥の痛み」などを引き起こします。酸を吸い込む刺激で「長引く空咳」が出ることもあり、呼吸器疾患だと思っていたら実は胃が原因だった、というケースも増えています。
逆流性食道炎 -検査の重要性
少しでも違和感があれば検査を
正確な診断と治療のためには、内視鏡検査をして粘膜の状態を直接確認することが最も重要です。治療の開始前にしっかりとした診断をすることで、効果的な治療にもつながります。主な治療は生活指導や薬物療法ですが、外科手術が必要となることもあります。症状や生活スタイルにあわせて治療方法を選択します。

逆流性食道炎 -受診の目安とセルフチェック
以下のような症状が繰り返し現れる場合は、逆流性食道炎が関係している可能性があります。症状が長引く場合や日常生活に支障を感じる場合は、早めに医療機関へ相談し、必要に応じて内視鏡検査を受けましょう。
チェック項目
□ 胸やけ(みぞおちから胸にかけて焼けるような痛みがある)
□ 呑酸 (酸っぱいものや苦いものが喉元や口の中まで上がってくる)
□ 喉の違和感が続く
□ 喉や胸のつかえ感、声がかすれる
□ 口内炎を繰り返す
□ 胸の痛みを感じる
□ 睡眠時に症状が出たり、睡眠の質が低下したりする
※これらの症状があっても必ずしも逆流性食道炎とは限りません
今日から取り組む!「胃をいたわる生活習慣」
胃酸の逆流を抑え食道の粘膜を守るためには、薬による治療だけでなく、日々の「胃をいたわる生活習慣」を整えることが不可欠です。現代の食生活では、タンパク質(肉類)の過剰摂取や、刺激物の摂りすぎが胃の負担になるといわれています。以下の食品は胃酸の分泌を促進したり食道と胃のつなぎ目を緩めたりするため、摂取量やタイミングに注意しましょう。
【特に注意したい食品】
・アルコール
・炭酸飲料
・ブラックコーヒー
・油っぽいもの
・酸味の強いもの
・炭水化物
・香辛料の多い料理
【食べ方のコツ】
・「腹八分目」を意識し、胃の圧力を下げる
・よく噛んで食べることで、酸を中和する唾液を多く出す
逆流性食道炎 -逆流防止機能低下の原因
胃から食道への逆流を防ぐ「下部食道括約筋」の筋圧低下の要因としては、「脂肪分の多い食事」「喫煙」「食道裂孔ヘルニア」「加齢による筋肉のゆるみ」などが挙げられます。
逆流性食道炎 -バレット食道について
逆流性食道炎の長期化に潜むリスク、食道がんへの懸念「バレット食道」
「バレット食道」とは、慢性的に胃酸や消化液が食道に逆流することで、食道の粘膜が繰り返しダメージを受け、修復される過程で粘膜が変質する状態をいいます。バレット食道自体に自覚症状はありませんが、これは将来的に「食道がん(腺がん)」が発生する土壌となる「前がん状態」の一つと考えられています。食道がんのリスクを高める状態であるため、健康診断で指摘された場合は、放置せずに消化器内科を受診し、定期的な検査を受けることが推奨されます。
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