望まない「受動喫煙」で有害物質を吸い込んでいるかも
受動喫煙 による子どもへの影響

受動喫煙 イメージ

乳幼児突然死症候群(SIDS)をはじめ、呼吸器疾患、アレルギー疾患との関連が指摘されています
「 受動喫煙 」とは、本人は吸っていないのに喫煙している人から出るたばこの煙(副流煙)や、喫煙者が吐き出す煙(呼出煙)を吸い込んでしまうことです。受動喫煙をなくすためには、周囲の人の禁煙が有効な対策になります。

監修・取材協力:
日本小児科学会認定専門医

日本アレルギー学会認定専門医
てらだアレルギーこどもクリニック 院長
寺田 明彦 先生

Contents

受動喫煙 による子どもへの影響 -基礎知識

残留たばこ、加熱式たばこも注意

喫煙は肺がんや心筋梗塞、脳梗塞などの危険因子となり、健康に影響を与えることが知られています。喫煙をしていなくても、自分の意思とは関係なく、たばこの煙を吸い込んでしまう受動喫煙の場合も健康に大きな影響を与えています。

その理由は喫煙者が吸い込む主流煙よりも副流煙に含まれる有害物質の量が多く、普段、たばこを吸わない人は吸う人よりも感受性が高いため、たばこの煙を吸っただけで健康被害を受ける報告があるからです。有害物質とは、ニコチン、タール、一酸化炭素をはじめ、炭素成分、硝酸塩、硫酸塩などの70種類以上の発がん性物質のことです。

大人の場合、たばこを吸う夫の妻は夫からの受動喫煙がない人に比べ、肺がんのリスクが1.3倍になるデータがあります。子どもの受動喫煙では、喘息等の呼吸器系の疾患や乳幼児突然死症候群(SIDS)が発症する報告がされています。

たばこの煙は微小粒子物質(PM2.5)という非常に小さな粒子です。空気中に漂いやすく、閉め切った空間では長時間、浮遊しています。喫煙中の人がそばにいなくても、たばこの成分は喫煙者の服や髪の毛についていたり、喫煙可能な部屋のカーテンや壁紙についていたり、喫煙後の自動車内だったり、残留たばこと呼ばれ、第3の受動喫煙として問題になっています。

また、副流煙が少ないタイプの加熱式たばこであっても、フィルターを通して有害化学物質が発生していることが分かっています。

子どもの受動喫煙の場合、家族に喫煙者がいることがほとんどです。子どもの目の前で吸っていなくても、空気中に滞留している成分が知らず知らずのうちに子どもの体の中へ入っていることがあります。子どもへの受動喫煙を防ぐには、家族や周囲の人の理解と禁煙が最も有効な対策です。

家の中、外に関わらず、家族や周囲の人の喫煙が子どもの健康に影響を与えています。

ここにも潜んでいるたばこの煙

  • 喫煙した後の部屋や車の中
  • 喫煙した部屋に置いてあるカーテン、家具、壁紙
  • 喫煙者の服や髪の毛、持ち物
  • 加熱式たばこを吸っている人が吐き出す息

たばこの煙の3大有害物質

●ニコチン
[含まれる量]主流煙 0.46mg/本、副流煙 1.27mg/本
血管を収縮させ、血液の流れを悪くします。また、動脈硬化を促進させます。たばこを止められないのは、ニコチン依存症です。

●タール
[含まれる量]主流煙 10.2mg/本、副流煙 34.5mg/本
発がん性物質、発がんを促進させる物質を数十種類含んでいます。

●一酸化炭素
[含まれる量]主流煙 31.4mg/本、副流煙 148mg/本
酸素を運ぶ機能を阻止し、酸素不足を引き起こします。また、動脈硬化を促進させます。

たばこの煙で悪化することが考えられる子どもの病気

乳幼児突然死症候群(SIDS)

予兆や既往歴がないのに、乳幼児が突然死に至る病気。令和元年には78名の乳幼児が乳幼児突然死症候群で亡くなり、乳幼期の死亡原因は第4位(厚生労働省発表)となっています。窒息などの事故とは異なり、原因は不明です。しかし、たばこが大きな危険因子となっていることが分かっています。妊娠中の妊婦による喫煙、妊婦や乳幼児のそばでの喫煙はやめましょう。


喘息

何らかの刺激によって気道に炎症が起こり、空気の通り道が狭くなって呼吸困難を繰り返します。きっかけとなる刺激にはダニ、ほこり、ペット、カビ、花粉や香水、ウイルス感染などがあります。

また、たばこの煙が喘息を発症させ、悪化させることが明らかになっています。たばこの煙は空気の通り道(気道)の粘膜を傷つけてさまざまな刺激に敏感となり、痰が増えて気道を狭くします。すると、発作が起きやすい状態になります。さらに、喘息に使う吸入ステロイド薬の効果を弱めると報告されています。


呼吸器症状の悪化や呼吸機能の低下

受動喫煙は肺の成長や呼吸機能低下に関連していることが報告されています。

中耳炎

細菌やウイルス感染による中耳の感染症。中耳炎が起こると発熱し、寝つきが悪くなったり、ぐずったり、不機嫌になります。耳を気にしていることで周囲が気がつくこともあります。鼻と耳がつながっています。受動喫煙に遭っている子どもの場合、中耳炎を繰り返しやすく、何度も中耳炎を起こすことで滲出性中耳炎になる可能性も高くなります。

喫煙そのものによって引き起こされる病気

  • 肺がんや咽頭がん、喉頭がんなどのがん
  • 動脈硬化や高血圧、心筋梗塞などの循環器の病気
  • 気管支炎、肺気腫などの呼吸器の病気

そのほか、ニコチンの血管収縮作用により、栄養や酸素不足を招くことで、歯周病、骨粗鬆症、シワ、脱毛、身長の伸びが悪くなるなど体、健康や発達にさまざまな影響を与えます。

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