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心臓の病気

心臓病 は“まったなし“の病気です
血液を全身に送り出すポンプの役割をしている心臓。何らかの原因によって心臓がうまく機能しなくなることで胸の痛みや苦しさなど、胸周辺にいつもとは違う症状が現れることがあります。

監修・取材協力:岐阜ハートセンター
肩書き 松尾 仁司

Contents

心臓の病気 -基礎知識

胸の痛み、苦しさを感じたら 心臓病 を疑って

全身に血液を送るポンプである心臓は、母親のおなかの中にいる時から御臨終まで休むことなく動き続けています

心臓の病気にはいろいろな種類の病気があります。血管(冠状動脈)の病気である狭心症や心筋梗塞、心臓内の血液の流れを一方通行にする弁の働きが異常となる心臓弁膜症、心臓の筋肉の異常から機能が低下する心筋症、心臓のリズムに異常をきたす不整脈などです。

これらの病気は症状として現れず、心電図異常や健康診断での異常として見つかる場合もありますが、動悸(ドキドキする)、息切れ、胸の痛みや締め付け感、めまい、目の前が暗くなる、などの症状で医療機関を受診されることが多くあります。このような症状が出現した場合には、一度医療機関を受診して、心臓病のチェックを受けることをお勧めします。重症化すれば心不全となり、突然死の原因となる場合もあります。特に15分以上続く胸痛、背部痛、意識消失などの症状は重篤な場合が多く、救急対応が必要な症状といえます。

心臓の病気 -近年の動向

心臓病 の新しい治療

心臓病の治療はこの30年で大きく進歩しました。狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症、不整脈、心不全、いずれの病気も外科治療のみだけでなく、カテーテルを用いての低侵襲の治療が可能となってきました。

胸を大きくあけることなく、つまった血管に血流を再開させたり、人工弁を取り換えたり、不整脈の回路を遮断したりすることを外科的手術以外の方法で治療することが可能な時代となりました。(状態によってはカテーテル治療よりも外科治療の方がよい場合もあります。)

心臓の救急疾患は時間との闘いです。手遅れにならないことが重要です。症状がでた場合には先送りすることなく、できるだけはやく専門医に相談しましょう。

死因順位の2位が 心疾患 です

平成30年の死亡数を死因順位別にみると、第2位が心疾患(高血圧性を除く)で20万8210人となっています。

心疾患は昭和60年に第2位となり、その後、死亡数・死亡率ともに増加傾向が続いています。

主な死因の構成割合(平成30年)厚生労働省 平成30年(2018年)人口動態統計月報年計(概数)の概況より

心臓の病気 のはなし医療最前線!!

岐阜ハートセンターは新しい治療に取り組んでいます

 循環器専門病院として、安全かつ質の高い最先端医療を提供し、地域の皆様の健康を支えています。

  • 重症大動脈弁狭窄症に対して経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)を行っています。
  • 心房細動治療として、カテーテルアブレーションに加え、経皮的左心耳閉鎖術を行っています。
  • 狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患治療においては、最先端の技術を用いて治療すべき病変の選択と治療効果の評価を行うことにより、患者様の予後をよくするカテーテル治療を行っています。

心臓の病気 -考えられる病気

突然発症し死にいたることもある
急性心筋梗塞

心臓を栄養する冠状動脈の動脈硬化を認める場所に血栓が発生し、冠動脈を閉塞して心臓の筋肉が障害・壊死をおこす病気です。命に関わる危険な病気であり、15分以上持続する胸痛や断続的胸痛がある場合は、一刻も早く病院を受診しましょう。早期に詰まった血管を再灌流することにより、救命する確率が高くなります


冠状動脈の動脈硬化が原因になる
狭心症

心筋梗塞までにはいたっていなくても、心臓を栄養する血管に動脈硬化が起こり、十分な血流が心筋に行き渡らない状態です。前胸部の締め付け感、痛みを労作時に自覚する労作性狭心症と、早朝や午前中に胸部圧迫感を感じる安静時狭心症、労作時にも安静時にもおこる労作兼安静時狭心症に分けることができます。冠動脈の状態をCTやカテーテル検査で確認することが必要です。


心臓弁組織が変性、硬化しておこる
心臓弁膜症

心臓は肺から戻ってきた血液を効率よく全身に送り出すために、血液が逆流しないようにする4つの弁(大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁)があります。これら弁の働きに異常が生じて、逆流や狭窄が生じる病気が心臓弁膜症です。重症になった場合にはカテーテルを用いた治療や外科的手術が必要なことがあります。


治療が必要ないものから危険なものまである
不整脈

一定の間隔と強さで打つべき心臓が、規則正しく打たず、乱れた状態で打つことを不整脈といいます。不整脈の中では特に治療を必要としないものから、早期に対応しないと命に関わる不整脈もあります。現在は薬による治療以外に、カテーテルを用いた不整脈治療も大きく進歩しています。


心臓病の行く末
心不全

心不全は心臓のポンプとしての働きが十分でなくなり、全身の循環がうまくいかなくなった状態です。原因は狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症、不整脈疾患など様々です。労作時息切れ、動悸を感じた場合には心不全を疑う必要があります。

心臓の病気 -この症状が現れたら救急車を!

急性心筋梗塞の疑いがあります。119番へ!

  • 胸が焼けるように重苦しい、押しつぶされる、しめつけられるといった症状がある。
  • 冷や汗、吐き気がある。
  • 上記のような症状が30分以上〜数時間続く。
  • 狭心症と診断されている。

心臓病 にならないために

心筋梗塞、狭心症、心不全、不整脈などの心臓病にならないためには、動脈硬化が進んでしまうと考えられる4つの危険因子、高血圧、脂質異常症、糖尿病をいかにコントロールするかが重要になります。これらの病気は初期には症状はないのが普通ですが、長期にわたりこれらの状態を放置すると、命にかかわる怖い病気を発症する確率が高くなります。

●高血圧
高血圧と診断された場合、生活習慣改善と薬物療法が重要です。生活習慣の改善では、減塩(1日6〜8g)、肥満の解消、適度の運動が必要になります。一般的に、適度な運動の目安は脈拍数が1分間に110~120程度、具体的には[138-(年齢÷2)]になるようにし、1回60分、週3回か、1回30分、週5~6回することをお勧めします。心臓病とすでに診断されている場合には、主治医の先生に運動量に関する相談をしましょう。日々の心身のリラックスや禁煙、少量のアルコール摂取も高血圧のコントロールによいと考えられています。

●脂質異常症(高コレステロール血症)
コレステロール値に異常がある(特にLDLコレステロール値が高い)と、動脈硬化が進み、脳梗塞、心筋梗塞など血管系の病気が起きやすくなります。血圧のコントロールと同様、まず食事や運動を含んだライフスタイルの改善を行い、動脈硬化による病気を起こすリスクが高い時は、薬物療法が追加されます。

●糖尿病
糖尿病は発症要因から大きく1型、2型に分けられます。日本人では糖尿病患者さんの約95%が2型糖尿病といわれ、「ストレス」、「肥満」、「運動不足」、「暴飲暴食」などのライフスタイルのみだれが主な原因となって起こります。この2型糖尿病は生活習慣病のひとつであり、生活習慣の見直しをすることが大切になります。食事習慣と運動習慣の見直しが重要であり、糖尿病や糖尿病予備群と診断された場合には、主治医の先生に相談し、正しい食生活、運動習慣の指導を受けてください。

高血圧、脂質異常症、糖尿病の治療を受けている場合は、胸痛、胸部圧迫感、労作時息切れを感じた場合には、心臓病のチェックをすみやかに行いましょう。心臓病は“まったなし“の病気であることを忘れないでください。

心臓病 を予防するための13条

  1. 禁煙をする
  2. 塩分の摂り過ぎに注意する
  3. 脂質、コレステロールの摂り過ぎに注意する
  4. 肉よりも魚、野菜を多く食べるようにする
  5. 栄養バランスの取れた食事を心がける
  6. 肥満に注意する
  7. お酒は適量
  8. 定期的な血液検査で動脈硬化の進行度をチェックする
  9. ウォーキングなどの有酸素運動をする
  10. 短気な性格を改める
  11. ストレスを溜め込まない
  12. 寒暖の差に気を付ける
  13. 規則正しい睡眠を取る

心臓病 -セルフチェック

1つでもあてはまったら循環器内科を受診しよう

□ 胸の痛み、圧迫感、しめつけられるといった症状がある
□ 動悸や息切れがある
□ めまいや失神をすることがある
□ 高齢
□ 生活習慣病がある
□ 喫煙や飲酒の習慣、ストレスがある

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