加齢などにより誰でもなりうる病気
成人の腹部の ヘルニア

治療方法は手術のみ!専門病院では日帰り手術が可能。
ヘルニア には様々な種類があり、発生部位によっては「脱腸」「でべそ」などの俗名も。ぽっこりと出ても、押し戻すと収まったりするため、放置しがちですが、悪化する前に受診し、現状を把握することが大切です。

監修・取材協力:医療法人いまず外科
今津 浩喜 院長

医療法人いまず外科 名古屋ヘルニアセンター 今津 浩喜
Contents

ヘルニア -基礎知識

日常的に、腹圧がかかる動作・運動、咳をする人は要注意!

「ヘルニア」とは臓器や組織などの一部が本来あるべき場所から飛び出ることを言います。腹部や背中、脳など、あらゆる部位で発症し、部位によって様々な疾患があります。最も多いのが腹部に発生するヘルニアで、お腹の中の腹膜や臓器(腸など)の一部が、腹壁から外に飛び出し、皮膚の下に脱出·突出する“外ヘルニア”と、腹腔内の裂隙に腹膜臓器が入り込む“内ヘルニア”があります。外ヘルニアは体表からでも確認することができ、「鼠径ヘルニア」や「大腿ヘルニア」、「臍ヘルニア」、「腹壁瘢痕ヘルニア」などがあります。「食道裂孔(れっこう)ヘルニア」などの内ヘルニアは、体表から確認することはできません。また、背骨のクッションである椎間板で起きるものを「椎間板ヘルニア」と呼び、腹部のヘルニアとは全く異なる病気になります。
腹部のヘルニアは、筋膜や腱膜の代謝に異常が起こることや、筋肉や組織の脆弱化により臓器を支える力が弱くなることで発生します。そのため、発生頻度は非常に高く、一度飛び出す穴ができると、自然に治癒することはありません。穴の大小に関係なく、治療方法は手術のみになります。近年、日帰り手術を専門的に行っている病院も増えています。緊急手術になる前に受診し、計画的に手術するようにしましょう。

年代別ヘルニア手術件数

ヘルニア -出やすい症状

立った時や、お腹に力を入れた際、発生部の皮膚の下に腹膜や腸の一部などがポッと飛び出し、膨らみを手で押し戻すと引っ込みます。
症状としては無症状から痛みがあるもの、腹部膨満や吐気を伴うものなど様々あります。無症状の場合、放置してしまうケースが多くありますが、押し戻すなどの症状を繰り返すことで、穴が徐々に大きくなり、痛みを感じるようになることがあります。悪化しても放置していると、引っ込まなくなる場合があり、この「嵌頓(かんとん)」という状態になると、腸閉塞や腹膜炎などを引き起こしたり、命の危険性も出てきます。

ヘルニア膨らんでいない状態
ヘルニア膨らんでいる状態
ヘルニア危険な状態

腹部ヘルニア 注意した方がよい人

ヘルニアの中で最も多いとされる腹部のヘルニアの場合は、主に加齢により筋膜がもろくなるといった脆弱化が原因とされ、40歳以降の男性は要注意です。その他には、長時間の立ち仕事や腹圧のかかる運動をしている人、肥満の人や前立腺肥大の人、既往歴、喫煙、慢性咳嗽(がいそう)や慢性的な便秘、妊娠や出産など、お腹に圧のかかることは、腹部のヘルニアの発生リスクを高めるといわれています。

ヘルニア -考えられる主な種類と特徴

体表がポッコリとなる「外ヘルニア」

いわゆる「脱腸」
鼠径(そけい)ヘルニア

立っている時に足のつけね(鼠径部)がポッコリと膨らむヘルニアで、外ヘルニアの8割~9割を占めています。中でも最も多い「外鼠径ヘルニア」は、体の右側で多く見られ、内鼠径輪を通って腹壁の外側に出現します。
子どもの場合は、ほぼ先天性のものですが、大人の場合は後天性のもので、慢性的に腹圧がかかる仕事やスポーツ、加齢によって増加するといわれ、40代以降の男性に多く発生するとされています。そして、内鼠径輪を通らずに腹膜を突き破り出現したものを「内鼠径ヘルニア」と呼び、高齢者に多くみられます。


肥満や妊娠によって発生
(さい)ヘルニア

通称「でべそ」。乳児期であれば、ほぼ自然治癒となりますが、成人の場合は手術が必要です。臍は臍の緒(臍帯)を閉じた跡であり、元々弱いため、肥満や妊娠による膨隆、腹水(お腹に水がたまる病気)などの持続的な腹圧の上昇に伴って発生しやすくなります。


痩せた高齢女性に多い
大腿(だいたい)ヘルニア

鼠径鼠径部の下の脚に繋がる太もも部分(大腿)に小さな膨らみができるヘルニア。大腿輪と呼ばれる脚につながる血管や神経が通る穴を塞いでしまうため、最も嵌頓(かんとん)しやすく、注意が必要です。疼痛を伴い、中年以降の痩せた女性(特に経産婦)に多く見られます。


肥満や妊娠によって発生
腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニア

開腹手術や外傷後の傷跡(瘢痕)が大きく膨らむ状態を指します。立った時、咳やくしゃみ、排便時などの腹圧がかかった時に発生することが多いヘルニアです。腹部の手術の合併症のひとつで、術後10年間で約1割の人に発症するといわれています。

見た目ではわからない「内ヘルニア」

閉鎖孔ヘルニア

痩せた高齢女性に多く、太ももの内側の痛みやシビレ感などが特徴的


食道裂孔ヘルニア

主に腹圧で胃が押し上げられることが原因で、胸やけや呑酸(どんさん)などの自覚症状が出るのが特徴。

鼠径ヘルニアになりやすい人 -自己チェック

□40歳以上の男性
□咳をよくする
□過激な運動をする
□お腹に力がかかる仕事をしている
□立ち仕事に従事している
□便秘症
□たばこを吸う
□喘息の人
□太っている
□妊娠している
□慢性肺疾患がある

多い人ほど、要注意!

マガジンタイプで読みたい方はこちら

今津 浩喜 院長 監修記事一覧

よかったらシェアしてね!
Contents
閉じる